スポンサーサイト

--/--/-- -- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

>>トップページに戻る

スポンサー広告
ホワイトテープ、ブラックテープ
BlackTape_05.jpg
©TinDrum Animation-The Animation Workshop

イスラエル出身のウリ&ミシェル・クラノット夫妻の『ホワイトテープ』の所見は2010年のアヌシー国際アニメーション映画祭
1本の白線がパレスチナ人の日常をいとも簡単に壊す、2分の映像。両監督は母国を離れ、オランダ、カナダ、デンマークなどで、イスラエルのパレスチナ占領への抗議の制作を続けています。
『ブラックテープ』は『ホワイトテープ』の続編で、同じくイスラエルの人権団体を支援する短編。
この2本は3部作で、3本目も計画されています。今回は、10年にトリウッドで公開した前作と併せて上映することに。
ウリ&ミシェル・クラノット夫妻の作品では、カナダ国立映画制作庁(NFB)の協力を得た『Hollow Land』は、理想の地を求め、流浪を続ける夫婦の、イスラエル人のディアスポラに重なる。
また滞在を続けるデンマークのアニメーション・ワークショップのアーティストインレジデンスでは、スウェーデンのErik Gandini監督の人種、宗教などを理由とする様々な差別を乗り越え、人類の共存を訴える『Cosmopolitanism』にアニメーション制作で参加。改めて、抽象的だからこそ持つ、アニメーションの力を感じる。なお、クラノット夫妻のアニメーション部分をまとめた『How Long, No Long』は世界のアニメーション映画祭に招待上映、受賞が続いています。
監督夫妻は、母国へのメッセージを込めた『ホワイトテープ』と『ブラックテープ』を日本で見てもらいたいと、WAT 2016に無償で作品を提供してくださいました。




(Otto)-オットー
Otto_EXTRA_STILL_04.png
©Job, Joris & Marieke

WATは新進気鋭監督の新作にもフォーカス。若手重視の国際賞のノミネート/受賞作からも作品を選びました。本作は、Cartoon d'Or(ヨーロッパ・アニメーションのオスカー)の受賞作。
Job, Joris & Mariekeスタジオは、1年に1本のペースでオリジナルのCG短編を制作。設立10年を待たずに『A Single Life』が米オスカーにノミネート。
本作は、空想の少年オットーを介して、内気な少女と不妊に悩む女性それぞれの成長を描いた最新作。前作よりも、わたしの心は動きました。
オランダといえば、ポール・ドリエッセン、ボルゲ・リング、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットといったアート系の名監督やディック・ブルーナの「ミッフィー」、そして実験的なCG映像も知られています。
本作は高度な技術を誇るCGアニメというより、ミッフィーに通じる、こどもにも、大人にも伝わるストーリーテリングが魅力。しかも巧みなカメラワークで、見えないはずのオットーが観客にも見えてくる。
オスカーのノミネート発表時も一緒にいた、監督たちの娘さんのエピソードを作品作りに取り入れるほど家族的なスタジオ。ビデオメッセージからも仲のよさが伝わる、3監督
優しさとウィットあるアニメーションを作り続けてほしいもの。




ちいさな芽
petite pousse making
メーキングより

本作を製作したフランスのFolimage(フォリマージュ)は、日本ならさしずめスタジオジブリ。エデュテインメント(教育+エンタテインメント)へのポリシーを持ち、立体コマ撮りから手書きまで、こども向けTVアニメとファミリー向け長編を作りながら、アート系も大切にするスタジオ。アーティストインレジデンスで、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット、コンスタンティン・ブロンジェットなど、著名な監督たちの国際映画祭デビュー作の制作を支援しています。わたしはフォリマージュの在り方とアニメーションが好きで、フォリマージュの日本の窓口として十数年来のお付き合いがあります。
本作はアーティストインレジデンスの新作の中で最初に目に留まったもの。
黒い砂の上に踊る色彩が美しい。草花から、気ままに色を切り取る少女。色を失った草原に、不思議な種の力を借りた少女が彩りを取り戻す。
一コマを作るのに二重の手間を要す、砂+油彩での表現はコンヴェルサ監督の学生時代の習作以来。十数年を経て実現したオリジナル作品は、自然美への慈しみを感じる佳作に仕上がりました。



サンティアゴ巡礼
Hasta_300_GGsmall.jpg
©Nadasdy Film Sarl-Les Films des Trois Marches-SRG SSR

世界最大規模のアヌシー国際アニメーション映画祭、中興の祖ジャンリュック・ジベラ氏の名を冠した、初監督作品賞受賞。わたしの中でカラーロ監督は本作までノーチェック。本作の初見は正直、さほど強い印象はなかった。
軽妙な音楽、個性的な映像、飄々としたナレーション。
選定に悩むも、日本配給ShortShortsの作品紹介にあった「巡礼路を歩く青年マポが出会った人たちは皆、リュックサックだけでなく、何かを背負っていた…」が引っかかり、再視聴。
イスラム教とキリスト教の文化がせめぎ合った歴史を持つスペイン。世界文化遺産の巡礼路には、熱心なキリスト教徒だけでなく、観光、スポーツ感覚や自己鍛錬、人生のやり直し、巡礼宿を泊まり歩く人と、様々な目的が行き交う。ヨーロッパの緊張を高める、ジハード(聖戦)のために銃を持つ過激な若者たちと、サンティアゴ巡礼者との温度差に興味。社会的視点を持つアニメーションとしてセレクト。
監督からビデオメッセージをもらえなかったのが心残り。

>>トップページに戻る

WAT2016 | コメント(0) | トラックバック(0)
WAT 2016 世界のアニメーションシアター、6月24日に京都・立誠シネマプロジェクトでの上映を無事終了いたしました。
初めて関東を離れ、初めて京都で上映をさせていただきました。集客がかなり不安でしたが、立誠シネマプロジェクトのスタッフの方々が善戦してくださいました。次回への足掛かりができました。
京都のシアターまで足を運んでくださったみなさま、どうもありがとうございました!

東京と京都の5名のゲストの方々のトークレポート一覧をご覧ください>>

さらに、姫路での上映が決定しました!
姫路・Animation Runs! 2016年8月5日(金)、6日(土)
於・姫路のカフェギャラリー、 Quiet Holiday

AnimationRuns!(アニメーション・ランズ!)は短編アニメーションを制作する 作家、学校、団体を特集する上映会です。2015年9 月から月一回のペースで、” 日常の延長の中で短編アニメーションを楽しむ小さな上映会”を継続開催してい ます。
詳しくは公式サイト>>

Animation Runs!を主宰する竹中啓二さんが京都の上映に来てくれて、「ぜひWAT 2016を上映したい」とおっしゃってくださいました。とても嬉しいことです。
わたしもSkypeで上映会に参加します!
WAT 2016 京都に続き、近畿地方で2か所目の上映です。
2日間の限定上映ですので、どうぞお見逃しなく

予告編も、名古屋での上映(7月29日~8月1日)と姫路を加え、更新しました>>

>>トップページに戻る

WAT2016 | コメント(0) | トラックバック(0)
6月12日(日)、京都・立誠シネマプロジェクト「世界のアニメーションシアター WAT 2016」のトークイベントのゲストとして、京都精華大学 京都国際マンガ研究センターの研究員、ユースギョン(庾水敬)さんをお迎えして、韓国、日本、フランス、カナダなどでのご活躍を伺いました。(写真 左)

IMG_1823.jpg

1986年に韓国で生まれたユーさんは、ものごころがついた頃から作文や絵を描くことが大好きだったとか。ご両親は「マンガを禁止」したものの、ユーさんはマンガに惹かれます。11歳で日本の“少女マンガ”と韓国のものとの違いに気づくと、マンガへの興味はさらに高まり、作文と作画の両方ができるマンガ家を目指すようになります。
韓国に初めてできた「韓国アニメーション高校」への進学を希望したものの、ご両親は大反対。大喧嘩をしながらご両親を説得、韓国アニメーション高校の第2期生になられました。流暢な日本語を操るユーさんも、高校時代に独学で日本語を覚えたのだそうです。
マンガへの興味が尽きないユーさんに、日本留学、マンガ学部がある京都精華大学への進学を勧めてくれたのは、マンガ禁止令を出していたお母さん。「韓国のマンガ研究はまだ遅れている。京都精華大学以外なら学費を出さない」と、叱咤激励。それに応えて、ユーさんは難関の京都精華大学に合格、2004年に初来日されました。以来、日本では京都以外に住んだことがないそうです。
京都精華大学・大学院では、ストーリーマンガを専攻。女性向けマンガ、マンガの視覚表現を研究され、13年に博士論文「日本の少女マンガと韓国の純情マンファにおける視覚的要素の比較研究―「花より男子」と「らぶきょんLOVE in 景福宮」の比較を中心に―」で博士号を取得。現在は、京都精華大学 京都国際マンガ研究センターの研究員として、さまざまな企画展や海外での発表などで活躍されています。

マンガ海賊版が1950年代から出回っていた韓国では、日本のマンガを通じてファンやマンガ家になった人たちが多く、マンガそのものにも少なからず共通点はあるそうです。それでも韓国の読者は「日本と韓国のマンガは違う」と直感。それは、絵柄やコマ割り、演出全般、描線などを含む視覚表現に違いがあると、ユーさんは分析。
日本のマンガは物語を重視し、新作発表・発刊のスピードが早く、大きな国内市場で激しい競争に曝されるから、「よりよいマンガが出てきて、人気がある」とも。
日本ではマンガ人気をけん引する同人誌ですが、韓国からも日本のコミケに出品する人がおり、規模は小さいながら、韓国にも「コミックワールド」という同人誌即売会があるそうです。

スライド3
ユースギョンさん直筆の”生い立ち”

大学時代に、ユーさんはフランスのマンガ、バンド・デシネにも興味を抱くようになります。テーマやモティベーション、視覚表現・技法や演出に、「フランスの作家は、何故これを描いたのか?わたしなら違う表現にしたかも」と疑問に思い、なぜ視覚表現の違いが生まれるか知りたいと感じ、休学してフランスへ。
アングレーム国際漫画フェスティバルで有名な、フランス西部のアングレームの近くに住み、フランス語を習得しながら、フランスのバンド・デシネ文化に浸ったそうです。アングレームの「作家の家」での研修を希望していたのですが、学生は受け入れてもらえず、断念。
「英語を勉強しよう」と、カナダのモントリオールへ移り、半年ほど滞在(ケベック州のモントリオールはフランス語圏ですが、英語系大学があり、英語教育は盛んです)。
こうしてマンガへの強い関心をきっかけに、ユーさんの世界は文字通り広がりました。カナダを離れ、しばらく世界を巡り、韓国語と日本語だけでなく、フランス語と英語も話さすようになって、京都に“帰国”。

ユーさんが学んだ「韓国アニメーション高校」は2000年に創立された、ソウル近郊(京畿道河南市)にある公立高校。韓国中から学生が集まるため全寮制で、校名にアニメーションを冠していますが、マンガ創作、映像演出、コンピュータゲーム制作も加えた4学科があり、1学年25名前後の少数精鋭主義。このような公立高校は増えて、今では全国に5,6校あるとか。卒業生は、国内だけでなく、ハリウッドの大手スタジオにも採用され、韓国のコンテンツ産業のけん引役になっているようです。
ユーさんが在学していた頃、先生たちはヨーロッパなどのアート的なアニメーションを好み、学生にもアート優先を求めたとか。そこには「マンガやアニメは日本から入ってきた文化。韓国のものではなくても、日本より良いものを創り出さねば」という義務感があったから。日本のアニメが人気と言われる韓国ですが、国際映画祭に出品される学生作品に日本のテレビアニメなどの影響が見られなかったのには、こういう背景があったのですね。
1998年に日本の大衆文化が解禁された韓国。今の若い世代は屈託なく日本のアニメやマンガに親しみ、韓国アニメーション高校でも「日本のアニメのような卒業制作が出てきた」と、最新の学生作品を紹介してくれました。

日本と海外作品を比較して、ユーさんがWAT 2016セレクション作品を評してくれました。
日本のアニメは作品(主人公)と“自分”(観客)との間に距離がないのに対し、海外作品では“自分”との距離感があります。たとえば、日本ではモノローグが多用されるが、海外作品にはナレーションはあっても、モノローグが少ない。『ビトイーン・タイムズ』は、鳩時計のモノローグが舞台回しとなり、「日本的と感じた」そうです。確かに、監督の桑畑かほるさんは日本出身ですね。
視聴前に解説を読まないユーさんは、触感のダンス』が聴覚障害者の登場する作品と知らずに見始めたところ、「主人公の耳が聴こえないのが分かり、見直したら、細かい配慮」に気づき、感心したそうです
また真逆のふたり』は、夫婦が上下逆さまの空間で生活する設定が良かったとか。

トークは、京都国際マンガミュージアムでの展覧会の企画、マンガ・アニメ関連の国際イベントへの招待参加など、ユーさんの国際マンガ研究センターでの仕事へ。
昨年10月イギリスで少女マンガの巡回展を行なったところ、延べ2万5000人が来場。ワークショップの参加者には、30・40歳代の人もいたそうです。
今年4月ギリシャで、初めての日本のマンガ展「マンガの先駆者たち」を開催。ギリシャにマンガファンいるの?と当初思ったそうですが、3日間に1万5000人が訪れ、親子連れも多く、ワークショップは盛況。日本のマンガマニアが驚くほどいると、再認識したそうです。
スライド10
海外で行なった日本のマンガ展

スライド11
巧みな語学力で日本のマンガの魅力を海外のワークショップで紹介するユースギョンさん

京都精華大学の竹宮惠子学長が発案した「マンガの原画'(ダッシュ)」プロジェクト。作家個人が保管するマンガ原稿は、日本のマンガ史の貴重な史料であるにも関わらず、消滅、散逸の危機に瀕しています。原画の保存と、それらを劣化させることなく内外でマンガ展を行なおうとするのが、「マンガの原画'(ダッシュ)」。
コンピュータにマンガ原稿を取り込み、綿密に色調整を重ねた上で印刷した、精巧な複製原画です。竹宮学長が中心となり、描線の濃淡や色彩の階調など微妙な細部まで再現し、原画と並べても見分けがつかない程の精度を持っているとか。出力・印刷は、大日本印刷が共同で技術開発しています。
2001年に始まったプロジェクトは国内で展覧会を重ね、海外も注目。上記のとおり、イギリス、ギリシャ、オーストラリアそしてフランスの展覧会は好評で、来年はドイツ開催が計画されているそうです。

かつてのユーさんは“外国人”が苦手だったのだそうです。堂々と海外でプレゼンされる、今の姿からは想像できません。日本のマンガへの興味関心が、ユーさんを日本に呼び寄せ、もっと広い世界へ導いているのですね。
ユースギョンさん、深い洞察力と高いコミュニケーション能力で日本のマンガ文化を広めてくださって、ありがとうございます!

「マンガの原画'(ダッシュ)」プロジェクトについて>>
 
ユースギョンさんの博士論文「日本の少女マンガと韓国の純情マンファにおける視覚的要素の比較研究―「花より男子」と「らぶきょんLOVE in 景福宮」>>

後記 昭和3年(1928年)に建設された、元・立誠小学校の校舎を活用する、立誠シネマプロジェクト。トークイベントも元教室で行われました。当日は梅雨空の蒸し暑い日でした。元校舎には冷房がなく(映画上映シアターはエアコン完備)、3階まで上ると、うぁっと汗が吹き出しました。それでも、窓を開け放った、3階の教室には風が吹き抜け、汗も引いて行きました。
窓の外を見れば、東山三十六峰が(写真)!建物の足元には、森鴎外の小説にもなった高瀬川。
京都の子どもたちは、なんて風情ある場所で勉強していたのでしょう!!
立誠シネマ06

ユースギョンさんとの楽しいトーク、映画好きなスタッフが心を込めて上映と接客をしてくれる立誠シネマ、京都で忘れえぬ思い出ができました。
WAT 2016の10作品をご覧いただいた京都、関西の皆さま、どうもありがとうございます。

(オフィスH 伊藤裕美)

>>トップページに戻る

WAT2016 | コメント(0) | トラックバック(0)
6月11日(土)、京都・立誠シネマプロジェクト「世界のアニメーションシアター WAT 2016」のトークイベントのゲストとして、株式会社ライデンフィルム、京都スタジオの坂本一也室長をお招きして、楽しいトークをさせていただきました。(写真 右)

坂本一也監督

坂本さんは岡山出身で、大阪デザイナー学院を卒業後、株式会社京都アニメーションに入社、2012年に株式会社ライデンフィルムに移り、今年3月にULTRA SUPER ANIME TIME (ウルトラスーパーアニメタイム、TOKYO MX/BS11)で放送された『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』(以下、彼女と彼女の猫EF)(注1)で監督デビューされました。
ご経歴を見ると、東京のアニメ界から離れて、関西で活躍されてきたことが分かります。
「なるべく地元に近いところで」という理由で大阪の専門学校に進学。京都アニメーションは、今でこそ日本を代表する元請けのアニメ制作会社ですが、坂本さんが就職された頃はまだ東京の下請けの仕事が多かったそうです。その後、06年の『涼宮ハルヒの憂鬱』や09年『けいおん』と、他を圧倒する作り込みと演出でヒット作を連作。坂本さんはアニメーターとして、ストーリーボーダー(絵コンテ)、演出としてヒット作に参加し、“京都のアニメーション”の発展と共に十年余りを過ごされました。
その中で「東京は日本のアニメ界の中心ではあるが、東京で働く意味があるのか?」と思うようになっていったそうです。
京都アニメーションを離れることになり、株式会社ウルトラスーパーピクチャーズ(注2)の松浦裕暁社長の「従来の東京型ではない、新しい制作スタイルを関西で作りたい」という思いに共感し、ライデンフィルム大阪スタジオを経て、15年1月に京都スタジオを室長として立ち上げました。
ライデンフィルムに移ってからは、アニメの企画立案ができ、元請けとしてアニメの発信と人材育成を関西で行なう拠点にするという方針のもとに坂本さんは制作でも、アニメーターの育成でも、采配を振るっています。

京都は、学生の街-大学だけでも約40校、人口のおおよそ10%が大学生。さらに、日本の映画発祥の地として、京都府・市は映画・映像産業に力を入れています。
坂本さんのアニメ人生そのものである京都で、坂本さんが所属するライデンフィルム京都スタジオはキャリア1年から5年ほどの若手スタッフが中心で、スタッフが夕方ではなく(!)、朝から出勤して効率よく仕事をしているそうです。
『彼女と彼女の猫EF』の監督を依頼された時、「東京には頼らないで、関西だけで制作しよう」と考えたそう。実際、坂本さんは京都スタジオを中心に、作画は京都と大阪で、仕上げは滋賀で、「無理だろう」と思っていた編集作業も大阪の会社で貫徹させました。その大阪のビデオ編集会社も、いつか関西がメインの仕事をしたいと考えているのだそうです。

坂本監督トーク

小説版『彼女と彼女の猫』を書かれた永川成基さんが、『彼女と彼女の猫EF』のシリーズ構成・脚本を担当しています。小説は221ページという大ボリュームのため、今回のTVアニメ版は原作でも小説版でもないオリジナルの話を一から作ったそうです。
「いろいろな人が見て、自分に当てはまると思える」ようなストーリーになっています。猫好きな人、就職活動中の大学生、思春期の子を持つ親、などなど。
新海誠さんのオリジナル版とはまるで別のアニメーション作品。わたしは、リメークの成功例と感心しました。
坂本さんは「時代に振り回されないこと」に努め、キャラクターのデザインも「なるべく今風のデザインにしない方向で」と、海島千本さんに依頼したとか。
その理由が振るっています、「たくさんの“萌系”作品に関わってきたが、実は萌に対して難しいという苦手意識の気持ちがあった」のだそうです。「ベタなものが好き」で、「王道ものが好き」。今のアニメは「複雑になり過ぎ」。「素直に楽しいとか、悲しいとか感じられるもの」が好きなのだそうです。

坂本さんも学生時代は、海外作品を見に広島国際アニメーションフェスティバルへ足を運ばれたとか。海外作品を見て、「感性が違う」と感じたそうです。
WAT 2016が選んだ10作品を、坂本さんは「刺激的で」、「進化している」と感じられ、「新しいものを創る意欲」が掻き立てられたそうです。
日本のアニメはマンガ原作ものが多く、ストーリー性を重視する傾向があります。一方、「シンプルで叙事詩的なヨーロッパのアニメーションは感性を表に出すので、シンプルに心が揺さぶられる」
技法的にも、ヨーロッパはアメリカのディズニーに代表されるような1秒間に24コマを描く“フルアニメーション”なのに対し、日本のアニメはわざとコマ数を減らす“リミテッドアニメーション”。そこに日本アニメならではの表現が生まれ、定着してきたのですが、「基本的には一緒なので、一辺倒な表現」という弊害も生じる。

WAT 2016セレクションの『触感のダンス』では、そのダンスシーンに「日本のアニメのコマ落ち技法を見つけて、日本のアニメの動きとの融合」を感じたそうです
フランス出身のジャンシャルル・エムボティマロロ監督が日本のマンガ・アニメ大ファンというアニメーターではなく、14歳でヒップホップダンスを始め、ダンスカンパニーにも所属し、ダンスが大好きなことを伝えると、「自然に、あの動きが作れたのなら、スゴイ」と感心されていました
エムボティマロロさんはダンスで磨いたリズム感、そして子どもの頃から聴覚障害を持つ人と暮らした経験を持っています。ダンスシーンはダンサーと共に、主人公の感情を表現する動きの一つ一つ確かめながらアニメーションに落とし込んでいます。(注3)

触感のダンス 『触感のダンス』 (c) Folimage



お客さまとのQ&Aで、学生さんと坂本さんとの間で次のようなやり取りが交わされました。
学生さん)「東京とは違うスタイル」とは?
坂本さん)単純なことで、就業形態の健全化を目指しています。家に帰らず徹夜するとか、“夜型を善し”とするスタイルを改善すること。ライデンフィルム京都スタジオはそれを徹底しています。業界に入って十数年間でも、徹夜はほぼしたことがありません。
不規則な就業の東京型は無駄な人件費の原因にもなっています。制作進行を何人も雇っているし、不規則で過酷な労働に耐えきれず制作進行が居つかず、新人教育に無駄な時間を費やす。アニメ制作会社の経営は赤字と言われますが、確かに制作費は多いとは言えないが、人件費の無駄を放置しているから、自分で自分の首を絞めているという一面もあります。
一つの場所で決まった時間に集まって仕事をすることによって、フリーランスが多く24時間稼働している現場より制作進行の人数も少なくすみます。ライデンフィルム京都スタジオでは、「夕方しか入らない」というアニメーターは、優秀な人でも採用しないこともあります(笑)。

学生)日本のアニメは原作ものが多いですが、オリジナル制作(インディペンデントなど)は商業から離れる傾向にあるのでは?
坂本)日本のアニメ制作は一つの側面として出版社がテレビアニメを広告媒体と考えて、制作に出資することがあります。マンガ出版社が入る製作委員会方式でないと資金的に厳しい。原作のないオリジナルは、そのような出資者が現れにくく、アート系アニメーションだと特に商業化が難しいのでしょうね。

学生)アニメーター採用の基準は?
坂本)伸び代があるかを重視します。技術的に出来上がってしまっている人より、やる気や向上心のある人。採用してみないと、実際のところは分かりませんが(笑)。
募集してくる学生は専門学校と美術大学から半々くらいの比率になっているようです。

トーク前の打ち合わせで、坂本さんは「効率的な仕事をするのは、どうすればいいか?」と常に考えている、と伺いました。問題があれば、若いスタッフ、後輩たちと話し合いながら解決策を見つけている。
今までの経験で身につけた“京都のアニメ制作スタイル”を進化させながら、クオリティでは妥協せず、「関西だけで制作を貫徹」したいという坂本さん。アニメーターなどの人材育成をトークでは十分に伺えませんでしたが、継続性のある「人を育てる仕組み」を考えつつ、『彼女と彼女の猫 EF』は見事なアニメーション映画に仕上がっていますね。

経年劣化が目立つ東京とは違う、関西・京都発のアニメーションに向かって邁進していただきたいし、国際的な展開もドンドンしていただきたいと強く思いました。
坂本監督、希望のあるお話をどうもありがとうございました!

注1)テレビ放送は1話約8分の全4話。今年5月に、新作カットと新しいオープニングを加えた、完全版としてBlu-ray/DVDが発売された。
注2)アニメ制作会社のサンジゲン、Ordet、トリガー、ライデンフィルムを傘下に置くホールディングスカンパニー。
注3)2015年の来日時、第18回文化庁メディア芸術祭 トーク付き上映会で、エムボティマロロと同芸術祭アニメーション部門の審査員でもあるアニメーション作家の和田敏克さんとのトークも参照ください>> http://massando.blog.fc2.com/blog-entry-1.html

(オフィスH 伊藤裕美)

>>トップページに戻る

WAT2016 | コメント(0) | トラックバック(0)
6月4日(土)にスタートする、京都・立誠シネマプロジェクトでのWAT 2016 世界のアニメーションシアター
2000年に開始した、オフィスH企画の海外アニメーション特集上映(現「WAT 世界のアニメーションシアター」)が初めて
関西圏で開催されます。

京都を中心にWAT 2016のチラシの配布も進んでいますので、ご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

トークイベントは終了しました。
レポートをご覧ください「坂本一也さんのトークイベント(6/11):信念を持って、関西から新しいアニメーションを作り出す」
レポートをご覧ください「ユースギョンさんトークゲスト(6/12):マンガの視覚表現研究者が見たWAT 2016の海外アニメーション-『ビトイーン・タイムズ』は日本的」

予告しておりましたトークイベントに、スペシャルゲストをお二人お招きすることが決まりました。

■ 6月11日(土)16:15~ ライデンフィルム京都スタジオの坂本一也監督
■ 6月12日(日)16:15~ 京都精華大学 京都国際マンガ研究センターのユースギョン研究員

坂本監督は、新海誠さん原作の『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』で初監督を務められ、下北沢トリウッドの上映は連日満員の大ヒット中です。立誠シネマプロジェクトでも6月25日~7月1日の限定上映が決定しています。その余韻の残る中、WAT 2016のトークイベントにゲスト出演していただきます。
京都を拠点にオリジナル・アニメーション映画を目指される坂本監督に、京都へのこだわり、そして海外展開への夢などを伺いたいと思っています。

ユー研究員は、韓国出身の国際マンガ研究家。ご自身もマンガを描く、作家でもあります。韓国・日本・英語・仏語の4ヶ国語を話す、コミュニケーションの達人。2004年に来日。京都精華大学 京都国際マンガ研究センターを拠点に「外国人としての視点を生かしつつマンガの視覚表現」を研究されています。京都精華大学学長の竹宮恵子さんがプロジェクトリーダーである「原画’ダッシュ」の内外での評価が高まり、海外展も増え、ユーさんは活動の幅をますます広げられています。
ユーさんご自身が卒業された「韓国アニメーション高校」に始まり、海外で評価される日本のマンガの魅力、そしてアニメーションの多文化性、国際性などをディスカッションさせていただきたいと思っています。

たくさんのご来場をお待ちしています。

詳しくは、立誠シネマプロジェクト 【トーク決定!】世界のアニメーションシアター WAT 2016>>
京都・立誠シネマプロジェクト WAT 2016 世界のアニメーションシアターの詳細>>
WAT 2016 世界のアニメーションシアター HP>>

>>トップページに戻る

WAT2016 | コメント(0) | トラックバック(0)
« Prev | HOME | Next »

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。